ロゲインの断片
「羊の楽園」
序盤戦、しばらくは楽なロードが続いていたが、CP24に向けては海岸に出て、波打ち際を走る。目の前は南半球の太平洋。潮の匂いは日本で感じるのと変わらない。一旦、僕らには落ち着く針葉樹の森に入り、再び海岸にでる。
次は海からの急斜面途中にある、難易度の高いCP75だ。海岸からの斜面をトラバースするように細いトレイルがついているが、時折断崖の中を進む。CPへと続く沢にぶつかり、いよいよ直登に入る。足元に海が広がっていくスリリングな光景。
しばらく登り続けると、ようやく斜面が若干緩くなる。そこで見たものは、羊たちの群れだった。彼らがどこからたどり着いたのかは知らない。そこは、外界からは隔絶された、羊たちの楽園だった。
---
「眠くならない方法」
夜間は予報通り雨になり、気温が低下した。特に海岸沿いや稜線上は風が強く、遮るものがないため、体感温度は相当低くなり、厳しいコンディションとなった。
私は21時ぐらいから薄手のジャケットを身に着けた。雨をしのぐのであれば、これで充分だったが、多量の水を含んだブッシュの通過で、服を着たまま泳いだような状態となり、そのまま風雨の稜線に上がることは、意図的に低体温症になろうとしているかのようだった。
平衡感覚がなくなり、全身が震え呼吸もままならない。即効でエネルギーが必要。山田君からパワーバーを分けてもらう。そして風船を膨らませる要領で口を膨らまし息を吐き出し、体温を上げる。原始的だが、これが唯一寒さに抵抗できる手段だった。幸い身体は反応してくれ、AM2時、ギリギリながらハッシュハウスに戻ることができた。
いかに危機的だったかというと、その後ゴールするまであくび一つの眠気もでなかった。眠ったらアウトという指令が、脳から強く出続けていたのだろう。
---
「チームNO.552」
僕らのチームは移動力はある方で、他のチームに落いつかれることなく終盤を迎えていた。CP43のアタックに入ると、先にCPを取り、ゆっくりと上りに入っているチームがいた。僕らと同様50に向かう動きだ。2分ほど遅れてCPに到着。斜面を上り稜線に戻ると、かのチームの姿は見えない。
しばらくすると、右後方から不意に1チームが近づいてきた。先ほどのチームだろうか。彼らはスムーズに柵を越え、斜めに僕らの前にでた。ゆるい下り基調であったが、じわじわ離される。お、このチームは走力あるな、そう思った。ゼッケンは552か。覚えておこう。そこからCP50に近づく間に1分近く離され、さらにアタックの差でもう1分ついた。いや、ナビゲーションも手慣れている。その後、彼らの姿は見れなかった。
表彰式。優勝チームが発表される。4365点。
チームNOは、552だった。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント